私と家族の15年書き初め日記――新年の心を整える書道体験と暮らしの変化

伝統芸術

毎年元旦、家族で半紙と筆を広げる時間が、私たちにとって一年の始まりの合図です。15年前、何気なく始めた書き初めが、今では家族の絆や私自身の心の在り方を大きく変えてくれました。

この記事では、私の実体験を交えながら、書き初めがもたらす新年の豊かさや、家庭で楽しむコツをお伝えします。

私が書き初めを始めたきっかけは、子どもが小学校に入学した年でした。最初は「宿題だから」と渋々筆を取っていた娘も、年を重ねるごとに自分の目標を文字に込めるようになりました。

ある年、私自身が体調を崩した時、娘が「家族みんなが元気でいられますように」と書いた一文字に涙がこぼれたことを今でも鮮明に覚えています。

この体験が、書き初めを単なる行事から「家族の心をつなぐ時間」へと変えてくれました。

書き初めは単なる文字練習ではなく、心の整理と目標設定の貴重な時間です。

書き初めの奥深い歴史と文化的意義

出典元: 寺子屋での書初めの様子 歌川豊国作 1804(享和4/文化元)年頃 

平安時代から続く伝統

私が京都の博物館で見た平安時代の「吉書」は、墨の香りや筆跡に千年前の人々の願いが込められているように感じました。新しい年の始まりに、心静かに自分の思いを書き記す――その伝統が今も続いていることに、深い感動を覚えます。

実際に京都の国立博物館で平安時代の吉書の展示を見た時、その優雅な文字に感動したことを今でも覚えています。千年以上前の人々も、新年に願いを込めて筆を握っていたと思うと、歴史のロマンを感じずにはいられませんでした。

江戸時代の庶民文化への広がり

江戸時代になると、寺子屋の普及とともに書き初めが庶民にも広まりました。

江戸時代の特徴
  • 商家:「商売繁盛」「千客万来」などの商売に関する言葉
  • 農家:「五穀豊穣」「天下泰平」などの豊作を願う言葉
  • 武家:「忠義」「武運長久」などの武士道精神を表す言葉

現代の書き初め文化

現代では学校教育の一環として定着し、家庭でも新年の恒例行事として親しまれています。特に戦後復興期には「希望」「平和」といった言葉が多く選ばれ、時代背景を反映した文化として発展してきました。

心に響く言葉選びの極意

書き初めでは、今年の目標や願いを表す言葉を選ぶのがポイントです。言葉選びに悩むこともあるかもしれませんが、大切なのは「今の自分にぴったりな言葉」を見つけることです。

年代別・目的別人気の言葉

年代人気の言葉込められた想い
小学生元気、友達、夢純粋な願いと成長への期待
中高生挑戦、努力、未来進路や将来への意識
大学生・社会人成長、感謝、前進責任感と自己実現
子育て世代家族、健康、愛家族への想いと安定
シニア世代感謝、平安、継承人生の振り返りと次世代への想い

私の体験談|言葉が人生を変えた瞬間

昨年、私が書き初めで選んだ言葉は「感謝」でした。実は前年に体調を崩し、家族や友人の支えの大切さを痛感した経験があったからです。忙しい日々の中で、小さな幸せや周りの支えにもっと気づける自分でありたい、という思いを込めました。

この言葉をリビングに飾ると、ふと目にするたびに心が温かくなり、日々をより前向きに過ごせました。朝のコーヒーの香り、子どもの笑顔、夫の「お疲れさま」の一言…当たり前だと思っていたことに、改めて感謝の気持ちを持てるようになったのです。

言葉は単なる文字ではなく、一年間あなたを支える「お守り」のような存在になります。

家族で選ぶ楽しさ

子どもたちと書き初めをすると、テーマ選びから盛り上がります。我が家では3年前、当時小学3年生だった息子が「元気」と大きく書いてくれました。

「なんで元気にしたの?」と聞くと、「お母さんが風邪ひいて寝てた時、悲しかったから。みんなが元気でいてほしい」と答えてくれました。子どもの純粋な想いに胸が熱くなり、その年は「元気」が家族の合言葉になりました。

結果的に、その年は家族全員が大きな病気もせず、自然と笑顔が増えた一年になったのを覚えています。

書き初めの準備と道具選びの完全ガイド

基本道具の詳細比較

道具初心者向け中級者向け上級者向け
太筆1本(兼毫筆)太筆・細筆セット羊毛筆、狸毛筆など複数
墨汁(開明墨汁など)固形墨+墨汁併用高級固形墨
プラスチック製天然石製(雨畑硯など)端渓硯、雨畑硯
半紙(練習用)画仙紙(清書用)手漉き和紙
予算2,000-3,000円5,000-8,000円15,000円以上

私の失敗談から学ぶ準備のコツ

初めて家族で書き初めをした時、私は準備不足で大失敗。新聞紙を敷き忘れ、リビングのカーペットに墨汁のシミができてしまいました。

今でもそのシミは「我が家の書き初め記念」として残っています。以来、必ずビニールシートを敷き、子どもたちにも「準備の大切さ」を伝えるようになりました。

やまとひめ
やまとひめ

汚れを気にせず楽しむために、新聞紙やビニールを敷くことを忘れないでね♪

環境づくりのポイント

昨年は、実家のリビングでいとこ家族も含めて総勢12人で書き初めをしました。最初は慌てて失敗もありましたが、みんなで一つの行事を共有することで、とても良い思い出になりました。

準備チェックリスト
  • 十分なスペースの確保(一人あたり畳1畳分)
  •  床や机の保護(新聞紙、ビニールシート)
  •  水入れ(筆洗い用)
  •  タオル(手拭き用)
  •  文鎮(紙を押さえる)

書き初めのテクニックと楽しみ方

基本姿勢と筆運びのマスター

書き初めで最も重要なのは、集中して書くことを楽しむことです。正しい姿勢は美しい文字の基本となります。

紙のサイズ別書き方ガイド

紙のサイズ推奨姿勢筆の持ち方コツ
半紙机上で正座単鉤法(親指と人差し指で挟む)肘を机につけず、手首を柔らかく
画仙紙床で正座または中腰双鉤法(親指と人差し指・中指で支える)体全体でリズムを作る
大判紙立位または中腰双鉤法(筆を立てて持つ)肩から大きく動かす

私が発見した「楽しい書き初め」の秘訣

書き初めを「文字を書く」だけでなく、アート感覚で楽しむのもおすすめです。

昨年、娘と一緒に「笑顔」という文字を笑顔マークの形にアレンジして書いたところ、予想以上に可愛い作品になりました。また、「星」という文字を星型に囲んで書いた作品は、今でも娘の部屋に飾られています。

お正月の書き初めではありませんが、以前音楽好きの息子のために、ピアノの絵を描いて、そこから音符が舞い上がるように歌詞を書いた作品を作ったこともあります。子どもの目がキラキラと輝いて、「お母さんすごい!」と言ってくれた時の嬉しさは今でも忘れられません。

型にとらわれず、自由な発想で書くことで、オリジナリティあふれる作品が生まれます。

家族で楽しむテーマ設定

昨年は「今年の一文字」を家族で決めるルールを作りました。夫は「継続」、私は「挑戦」、娘は「友」、息子は「楽」。

それぞれが選んだ理由を発表し合うことで、普段はなかなか話せない想いや目標を知ることができ、家族の会話も自然と増えました。特に娘が「新しい友達を作りたい」と話した時は、家族みんなで応援する雰囲気が生まれました。

  • :「継続」(ジョギングを続けたい)
  • :「挑戦」(新しい資格取得に向けて)
  • 長女:「友」(新しいクラスで友達を作りたい)
  • 次女:「楽」(ピアノを楽しく続けたい)

この時間を通じて、家族それぞれの想いや目標を知ることができ、お互いを応援し合うきっかけにもなりました。

作品の活用と保存方法

飾り方のアイデア

書き初め作品は書いて終わりではありません。一年間目に触れる場所に飾ることで、目標を意識し続けることができます。

場所別飾り方
  • リビング:額縁に入れて壁掛け
  • 玄関:来客にも見てもらえる場所に
  • 子ども部屋:勉強机の前に
  • 寝室:朝起きた時に見える場所に

長期保存のコツ

私は毎年の書き初め作品を大切に保存しています。10年分の作品を見返すと、文字の上達だけでなく、その時々の心境の変化も感じられて、とても感慨深いものがあります。

保存方法
  • 作品を完全に乾燥させる
  • 薄紙を挟んで平らに保管
  • 湿気を避けて保存
  • 年月日と選んだ理由をメモして一緒に保管

まとめ

15年間続けてきた書き初めは、私にとって「心の鏡」のような存在です。過去の作品を見返すと、その時々の自分の悩みや希望が文字として残り、成長の軌跡を感じます。

家族で過ごすこの特別な時間が、私たちの絆を深め、毎年新しいスタートを切る勇気をくれるのです。今年もまた、筆を手に取り、自分らしい一文字を心を込めて書きたいと思います。

家族で書き初めを行うことで、お互いの目標や願いを知り、励まし合うきっかけが生まれます。新年を迎える特別な時間を共有することで、自然と絆が深まります。

筆を握り、集中して文字を書く時間は、現代の忙しい生活の中で貴重な「心の休息時間」となります。デジタル社会だからこそ、アナログな書く行為が心に安らぎをもたらしてくれるのです。

今年はぜひ、書き初めを通して新しい年を彩る素敵なひとときを過ごしてください。完璧を求めず、楽しむ気持ちを大切に。あなたらしい書き初めが、きっと素晴らしい一年の始まりとなるでしょう。

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